楽しいお食事やお茶を飲んで一息といった場面でむせたり、咳き込んだり、なんだか喉の奥に食べ物が残っているようなことはありませんか。実は飲み込むことがうまくできなくなっているのかも知れません。この、飲み込む行為を嚥下(えんげ)と言い、うまく飲み込めない症状が常態化すれば嚥下障害と診断されます。そのまま放っておいて、悪化すると肺炎を起こすことがあり、これがよく耳にする誤嚥性(ごえんせい)肺炎です。
私たちは、楽しみであるお食事をこれからも長く続けて頂くために、各部署が連携して飲み込みに関するサポートに取り組んでいます。
栄養部より
今回は「病院における患者様と家族様に喜んでもらえる嚥下(えんげ)調整食づくり」と題して阪和記念病院栄養部 課長 尾上 理香(おのうえ りか)がお伝えします。
数年前実施したアンケートにショックを受けました。「母の食事がようやく開始されることになり、とても喜んでいました。しかし、最初の食事は味気ない食器で、見た目がすべて同じようなものばかりで、とても食事とは思えないものでがっかりしました」というものでした。管理栄養士がチーム医療の一員として身体や機能の回復のために安全に経口摂取していただけるよう工夫しているつもりでした。しかし、家族が思う”食事”とはズレがあることを知る機会となりました。そして、”患者様だけでなく見守る家族様にも口から食べることができた喜びを一緒に感じたい”という期待に添える食事を目指し、嚥下調整食への新たな取り組みを始めました。
まず、取り掛かったのは経口開始の流動食からでした。それぞれの献立に合わせ、甘いものはプリン型や花型、みそ汁は汁椀、スープはスープ皿と食器やかたちに変化をつけ、ゼラチンからとろみ剤へ変更し、温かい方が美味しくいただけるものは温かいゼリーとして提供するようにしました。
何を食べているのかがわかるように常食メニューをゲル化剤を使用しペースト・固形化・成形して提供することを試みています。
見た目の改善だけでなく、見た目と味が一致するよう調味料やだしの量を試行錯誤し最適な調整を行えるようになりました。そして、平準化にも取り組み、画像とマニュアルを作成し、いつでも同じものを提供できる体制を整えることができました。