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北風政史医師の論文「心不全の新しい薬物治療に関する薬剤介入臨床研究」が Natureの姉妹紙Scientific Reportsに掲載されました

  • 2023-08-07
  • 論文・講演

Efficacy of azilsartan on left ventricular diastolic dysfunction compared with candesartan: J-TASTE randomized controlled trial(アジルサルタンの左室拡張期機能障害に対するカンデサルタンとの比較における有効性:J-TASTEランダム化比較試験)という論文が、2023年8月2日、国際的な学術雑誌Scientific Reports にon lineにて掲載されました。

この試験は、錦秀会の北風政史医師が主任研究者を務めた大規模臨床研究(J-TASTE試験)となづけられており、左室拡張期機能障害に対するアジルサルタンとカンデサルタンの有効性を比較検討したものです。本研究には、国内23の大学や病院が参加し、高血圧性心不全患者193名にアジルサルタンとカンデサルタンのいずれかを投与し、どちらのほうが左室拡張期機能障害に対して有効であるかを検討したところ、カンデサルタンにくらべてアジルサルタンはより効果が高い可能性が示されました。

 

背景

心不全は罹患率、死亡率、医療費とも増加の一途をたどっており、医学・医療の大きな問題となっています。近年の疫学的研究によれば、「心機能の保たれた心不全」および「心機能の軽度低下した心不全」が心不全の約1/3から1/2を占めていることが明らかとなり、さらにこれらの病態に心筋と血管の障害から発生した左室拡張機能障害が重要であると報告されています。基礎研究の成果からレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)という生体内神経体液因子の活性化は、心室および血管障害を引き起こすことが知られています。このため、RAASの阻害は心不全の治療オプションの1つとされており、CHARM試験では、RAAS阻害薬の一つであるカンデサルタンが「心機能の保たれた心不全」および「心機能の軽度低下した心不全」にも有用であることが示されました。アジルサルタンは、カンデサルタンよりも心筋・血管ともにRAASの阻害効果が強いため、「心機能の保たれた心不全」および「心機能の軽度低下した心不全」により効果がある可能性が考えられます。

 

研究の概要

今回実施されたこの無作為化されたオープンラベル試験では、HFおよびLV射出率が≥45%の高血圧性患者193名を、アジルサルタン20mg(n = 95)またはカンデサルタン8mg(n = 98)に48週間にわたり1日1回投与しました。主要評価項目は、ピーク早期拡張期大動脈流速(E)と早期拡張期僧帽弁輪速度(e′)の比率(E/e′)としました。アジルサルタン群のE/e′の変化は−0.8(95%信頼区間[CI]:−1.49から−0.04)であり、カンデサルタン群では0.2(95%CI:−0.49から0.94)となり、両群間の差は−1.0(95%CI:−2.01から0.03、P = 0.057)となり、左房体積指数の中央値変化は、アジルサルタン群で-2.7 mL/m2、カンデサルタン群で1.4 mL/m2でした(P = 0.091)。一方、低血圧および高カリウム血症に関連する有害事象の頻度は、両群間で差がありませんでした。本研究から、アジルサルタンがLV拡張機能障害を改善することを強く示唆されため、さらに大規模研究でアジルサルタンの有効性を確認する必要があります。

 

展望

「心機能の保たれた心不全」および「心機能の軽度低下した心不全」に対する治療薬は、現在SGLT2阻害薬しかないため、さらなる薬剤の出現がのぞまれています。本研究によりアジルサルタンが「心機能の保たれた心不全」および「心機能の軽度低下した心不全」に対して効果がある可能性が示されたことから、アジルサルタンがこの病態に対するあたらしい治療薬になりうることがしめされ、心不全に苦しむ方の大きな福音になる可能性があると思われます。

 

 

医療法人錦秀会 阪和病院・阪和記念病院

統括院長・総長 北風 政史

〒558-0041大阪府大阪市住吉区南住吉三丁目5番8号

TEL:06-6696-5591 / FAX:06-6606-7761

(問い合わせ先 阪和記念病院 安永幸司 yasunaga.kouji@kinshukai.or.jp)

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