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錦秀会阪和第二泉北病院 循環器内科・大阪大学大学院医学系研究科に所属する岡本千聡医師が阪和第二泉北病院 栄養部および阪和病院・阪和記念病院 北風政史医師らと共同で行った研究「血清カリウム濃度と療養病棟における胃食道逆流症患者の経管栄養不耐症リスク」がClinical Nutrition誌に掲載されました。

リード

「血清カリウム濃度と療養病棟における胃食道逆流症患者の経管栄養不耐症リスク」(Serum potassium levels as an independent predictor of unplanned enteral nutrition discontinuation in older adults with gastroesophageal reflux disease)というタイトルの論文が2024年11月20日、栄養学分野の国際誌Clinical Nutrition(IF: 6.6 Cite Score: 14.1)にオンライン掲載されました。(Clinical Nutrition 2025;44:46-53) https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0261561424004266). この研究は、錦秀会・阪和第二泉北病院循環器内科および大阪大学大学院医学系研究科の岡本千聡医師が、阪和第二泉北病院 栄養部の栄養士、阪和病院・阪和記念病院 北風政史医師と共同で実施しました。本研究により、血清カリウム濃度の上昇が療養病棟の高齢者における経管栄養の継続性を妨げる重要な予測因子となることが明らかとなりました。

背景

超高齢社会において、経管栄養を必要とする患者は増加の一途を辿っています。特に胃食道逆流症(GERD)を有する患者では、嘔吐や胃排出遅延のリスクが高く、経管栄養の継続が困難となるケースが多く見られます。経管栄養の中止は、患者の栄養状態の悪化、入院期間の延長、医療費の増加など、様々な問題を引き起こす可能性があります。これまでの研究では、年齢、基礎疾患、栄養状態など、様々な因子と経管栄養不耐症との関連が検討されてきましたが、血清電解質、特にカリウム濃度との関連についてはほとんど知られていませんでした。
そこで研究グループは、療養病棟に入院中の胃食道逆流症患者213名を対象に、血清カリウム濃度と経管栄養不耐症との関連性について後ろ向き観察研究を実施しました。

結果

2018年から2023年までに収集された213人の患者データを、血清カリウム濃度に基づき3群(低カリウムレベル群[<4.0 mmol/L]:63人、中間カリウムレベル群[4.0-4.5 mmol/L]:89人、高カリウムレベル群[≥4.5 mmol/L]:61人)に分類し、30日間の経管栄養の継続性を評価しました。観察期間中57人(26.8%)に予定外の経管栄養中止が発生しましたが、その内訳は高カリウムレベル群で24人(39.3%)、中間カリウムレベル群で23人(25.8%)、低カリウムレベル群で10人(15.9%)でした。 カプランマイヤー生存曲線による解析では、血清カリウム濃度が高いほど経管栄養中止のリスクが有意に上昇することが示されました(Log-rank検定、P = 0.002)(図)。さらに多変量解析においても、血清カリウム濃度はALT値(ハザード比[HR] 1.011 [95%信頼区間[CI] 1.006-1.015]、P < 0.001)、CRP値(HR 1.055 [95%CI 1.010-1.102]、P = 0.015)と並び、独立した予測因子であることが確認されました(HR 1.700 [95%CI 1.100-2.627]、P = 0.017)。 特筆すべき点として、このリスクの上昇は従来の臨床的な高カリウム血症の基準値とされる5.5 mmol/Lを下回る範囲から既に認められ、比較的軽度なカリウム値の上昇でも経管栄養の継続に影響を与える可能性が示されました。これらの結果は、血清カリウム濃度の管理が経管栄養を継続する上で重要な要素となることを示唆しています。

サンプル

展望

本研究により、血清カリウム濃度という日常診療で頻繁にモニタリングされている指標が、経管栄養の予後予測に有用である可能性が示されました。特に、従来の臨床的な高カリウム血症の基準値(5.5 mmol/L)を下回る範囲でもリスクが上昇する傾向が明らかとなり、カリウム値の慎重な管理の重要性が示唆されています。
これらの知見は、高齢者の栄養管理における新たな治療戦略の一助となる可能性があり、今後はパチロマーやジルコニウムシクロケイ酸ナトリウムなどの新しいカリウム降下薬の活用や、肝機能や炎症状態など他の因子も含めた包括的な管理アプローチについて、さらなる検討が望まれます。

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