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診療科・部門 心臓血管センター

睡眠時無呼吸症候群 Sleep Apnea Syndrome: SAS

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)とは、睡眠中に気道が閉塞することによって無呼吸が頻回に起こり、睡眠が障害されて様々な症状が現れる疾患です。
無呼吸のため十分な睡眠がとれず、日中の眠気、集中力低下や活力喪失などの症状が起こります。
交通事故や災害事故の原因との関連から社会的に問題になっています。
また、独立した動脈硬化危険因子であり、脳卒中・狭心症・心筋梗塞などの合併症を起こすために医学的にも問題になっています。
生活環境の変化により日本国内でも約200万人以上の潜在的な患者が存在しています。今後も更に増加傾向にある重要な病気ですので、早期の専門医師による受診・検査をお勧めいたします。

 

原因

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は次の3つに分類されます。

1)閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive SAS; O-SAS)

上気道の閉塞によって起こるタイプです。無呼吸中に呼吸努力が認められます。
気道閉塞は睡眠に伴う筋力の緊張低下で、舌が喉の奥に落ち込むことによって起きます。体重増加、寝る前のアルコールや、睡眠薬などは舌の落ち込みを促進し、気道閉塞の増悪因子になります。

主な原因として
  • 鼻・咽頭部の異常
  • 上気道の形態学的異常による内腔の狭小化(扁桃肥大やアデノイドなど)
  • 小顎症などの骨形成異常、下顎の発達不全
  • 肥満による軟口蓋軟部組織への脂肪沈着増加
  • 粘膜ひだの過形成、粘膜浮腫
  • 頸部の屈曲などによって上気道内腔の狭小化など

 

2)中枢型睡眠時無呼吸症候群(Central SAS; C-SAS)

呼吸中枢の障害によって起こるタイプ。
呼吸中枢からの命令(ドライブ)が消失するため、胸郭と腹壁の動きがなくなる。中枢型無呼吸は、呼吸の自動調節系そのものの障害によると考えられている。さまざまな器質的異常や慢性心不全などの心血管疾患によって呼吸中枢から呼吸筋へのドライブが消失することによって起こります。

中枢型無呼吸症候群を引き起こす疾患
  • 慢性心不全
  • 心血管疾患(狭心症、心筋梗塞)
  • 感染による脳障害
  • 脳血管障害(脳梗塞、脳出血)
  • 脳幹部悪性腫瘍
  • 頸部外傷など

 

3)混合型睡眠時無呼吸症候群(Mixed SAS; M-SAS)

閉塞型と中枢型が両方存在するタイプ

 

図:上気道の解剖(正常)

図:上気道の解剖(正常)

図:正常人の睡眠時における気道状態(青矢印は空気の流れを示す)

図:正常人の睡眠時における気道状態(青矢印は空気の流れを示す)

睡眠中、筋肉が緩んだ状態(弛緩)でも気道は確保されている。

 

睡眠時無呼吸症候群の“いびき”発生時における気道状態
舌や軟口蓋が緩んで(弛緩)、呼吸により軟組織が振動して“いびき”をかいたり、無呼吸・低呼吸(酸素不足)になる。(黒矢印は空気が気管に流れないことを示す)

 

症状と合併症

夜間睡眠中の症状として、いびき、無呼吸や夜間頻尿が高頻度にみられます。
特に間欠的ないびきや無呼吸は、家族や友人に気づかれることが多いです。
昼間の症状としては、起床時の頭痛、日中の傾眠傾向や全身倦怠感などがあります。日中の傾眠が極度な場合は、集中力の低下、仕事の能率低下や交通事故を起こすなど、大きな社会問題になっています。
放置しておくと無呼吸のために低酸素状態に陥ります。長期化すると夜間突然死の危険が増加したり、様々な心血管病を引き起こします。

 

 

心血管疾患と睡眠時無呼吸症候群の関連性

図: 各心血管疾患における睡眠時無呼吸症候群の合併頻度 (%)

図: 各心血管疾患における睡眠時無呼吸症候群の合併頻度 (%)
JCS 2010 ガイドラインより

これまでに心血管疾患と睡眠時無呼吸症候群の関連性について多くの報告があります。図に示すように多くの循環器疾患で睡眠時無呼吸の合併頻度は高く、特に薬剤抵抗性高血圧、心不全や急性冠動脈疾患などではその頻度は高くなっています。

 

睡眠時無呼吸症候群と心血管イベント

重症の睡眠時無呼吸症候群を合併すると、突然死や心筋梗塞などの致死的心血管イベントの発症リスクが有意に高まることが数多くの臨床研究で報告されています。

 

図:睡眠検査を施行した男性(1,651人)に対して、致死的心血管イベントの発症率を平均10年間追跡した観察研究を示します。

図:睡眠検査を施行した男性(1,651人)に対して、致死的心血管イベントの発症率を平均10年間追跡した観察研究を示します。

重度の睡眠時無呼吸症候群(重度SAS: 赤線)は正常群(緑点線)と比べて、致死的心血管イベントの発症リスクが有意に高いことが報告されています。

 

検査

夜間の窒息感などの自覚症状のある方、家族様から睡眠中にいびきや無呼吸を指摘されたり、心筋梗塞や心不全などの循環器疾患のある方は、早めにご相談・検査を受けることをお勧めいたします。
当センターでは、患者様の睡眠や日中の状態などを問診した後、夜間の睡眠状態を詳しく検査します。
“終夜ポリグラフィー検査(PSG検査)” により睡眠状態を調べ、治療方法を検討します。

終夜ポリグラフィー検査(PSG検査)については睡眠障害検査の項目をご参照ください。

さらに当センターでは、睡眠時無呼吸症候群がある場合には、重大な心血管合併症がないかどうかもチェックし、早期発見・早期治療に努めております。

 

治療(閉塞性睡眠時無呼吸症候群: OSAS)について

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者では以下の治療が基本となります。

減量

肥満の場合は減量が必要です。減量により症状が改善する事が数多く報告されています。

生活習慣の是正と運動

飲酒・睡眠剤は筋肉を弛緩させ、無呼吸を増悪させるので中止しなければなりません。

体位療法

仰向けで症状が出現する方は側臥位になると改善することがあります。

鼻マスク式持続陽圧呼吸(Continuous Positive Airway Pressure: CPAP)

CPAP装置が広く使われおり、現在この方法が最も効果的です。

口腔内装具による治療

マウスピースなど歯科装具を用いて下顎を前方に移動させて上気道にすきまをつくり換気を助ける治療法で、これにより改善する方がいます。

手術

扁桃肥大などが原因である場合には切除術が有効の方がいます。

 

持続的気道陽圧法 Continuous Positive Airway Pressure: CPAP

睡眠中に鼻マスクを装着して持続的に外から圧を加え、閉塞した上気道を開く方法です。

サンプル
 
図:鼻マスク式持続陽圧呼吸(CPAP)療法。

図:鼻マスク式持続陽圧呼吸(CPAP)療法。

マスクによる陽圧呼吸(右図)により、落ち込んだ舌根が持ち上がることにより上気道が開き、確保される。その結果、睡眠中に筋肉が緩んだ状態(弛緩)でも気道は確保されている。(水色矢印はCPAP療法により、空気の流れが気管にスムーズに流れていることを示す)

 

CPAP療法による治療効果

CPAP療法の効果に関しては、これまで数多くの臨床報告がされています。
眠気や集中力低下などの自覚症状を改善させるほかに、脳卒中、狭心症、心筋梗塞などの心血管イベントや夜間の突然死などを減らし生命予後を改善することが明らかになっており、現在もっとも確実で効果的な治療法となっています。

 

図:心不全患者88人を「CPAP治療群」と「未治療群」に分け予後を検討した臨床研究では、CPAP療法を行うことにより、死亡および心不全増悪による入院のリスクが有意に低減したと報告されています。

図:心不全患者88人を「CPAP治療群」と「未治療群」に分け予後を検討した臨床研究では、CPAP療法を行うことにより、死亡および心不全増悪による入院のリスクが有意に低減したと報告されています。

 

治療(中枢性睡眠時無呼吸症候群: CSAS)について

一方、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)患者では、Bilevel CPAP、ASV療法(※)または在宅酸素療法が適応となります。

ASV療法については詳しくは心不全の項目をご参照ください。

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