失神 Syncope
失神とは…?
一過性の意識消失発作の結果、姿勢が保持できなくなり、かつ自然に、また完全に意識の回復が見られる状態を指します。原因としては起立性低血圧、神経調節性、心原性、脳血管による異常により起こります。
症状および必要な検査
症状としては意識消失です。病歴、身体所見、血圧測定、採血、心電図検査、24時間心電図、レントゲン、CT、MRI、エコー検査、ヘッドアップチルト検査、場合により脳波検査やカテーテル検査などが行われ、原因検索と除外診断を行う必要があります。

ヘッドアップチルト検査の様子
治療
原因疾患により異なりますが、血圧に起因する場合は生活改善や昇圧剤が適応になります。神経調節性の場合も生活改善や抗不整脈薬、場合によりペースメーカーの埋め込みが適応になります。起立訓練により回避できる場合もあります。頻脈性不整脈が原因の場合は抗不整脈薬やカテーテル治療、場合により埋め込み型除細動器が適応になります。徐脈性不整脈が原因の場合は基本的にはペースメーカー埋め込みが必要になります。他の疾患が原因の場合にも各疾患の治療ガイドラインに従い治療を行います。
植え込み型データレコーダーについて
よく失神するけど原因がわからない、病院でいろいろ検査したけど原因がわからないままだった・・・
そのような場合には植え込み型データレコーダーを皮下に植え込んで検査を行います。

図 植え込み型データレコーダー
局所麻酔で皮膚の下に植え込み型データレコーダーを植え込みます。
傷口は約2 cm程度の簡単な手術です。診断がついたら植え込み型データレコーダーは取り出します。局所麻酔で簡単に取り出すことができます。
植え込み型データレコーダーは、原因不明の失神症例の診断においてホルター心電計や体外式ループレコーダよりも有効であることが臨床的に証明されています(文献1)。
断続的な皮下心電図モニタリングを用いて原因不明の失神や失神を起こす予兆(胸痛、めまい、動悸、息切れなど)を持つ患者様の治療方針の決定に役立てます。
心臓のリズムを継続してみることにより、失神発作の原因が心臓の病気なのか、その他の病気なのかを調べることが可能になります。
原因不明の失神がある患者様は、心原性の発作や心臓突然死に遭遇しやすいハイリスク・グループに属します(文献2)。

グラフ:失神の原因別の生命予後
心原性(赤印)は生命予後が悪いので絶対に見逃してはいけません。
従来の方法で診断することが難しかった原因不明の失神も、植え込み型データレコーダーを用いることで診断確率を約90%まで上げることが可能になります(文献3)。
文献
- Heart rhythm during syncope and presyncope: results of implantable loop recorders.
Nierop PR1, van Mechelen R, van Elsäcker A, Luijten RH, Elhendy A.
Pacing Clin Electrophysiol. 2000 Oct;23(10 Pt 1):1532-8. - Incidence and prognosis of syncope.
Soteriades ES, Evans JC, Larson MG, Chen MH, Chen L, Benjamin EJ,
Levy D.N Engl J Med. 2002 Sep 19;347(12):878-85. - Use of an extended monitoring strategy in patients with problematic syncope.
Reveal Investigators. Krahn AD1, Klein GJ, Yee R,
Takle-Newhouse T, Norris C. Circulation. 1999 Jan 26;99(3):406-10.