病院からのお知らせ
錦秀会・阪和記念病院の北風政史医師・宮下洋平医師・矢田豊医師が行った「メタボリック症候群と乳がん発症の関係に関する臨床研究」がSpringer系専門誌であるCardiovascular Drugs and Therapyに掲載されました。
錦秀会・阪和記念病院の北風政史医師・宮下洋平医師・矢田豊医師が行った「メタボリック症候群と乳がん発症の関係に関する臨床研究」がSpringer系専門誌であるCardiovascular Drugs and Therapyに掲載されました。
論文タイトルは以下の通りです。
「メタボリック症候群と乳がんとの関係に関する臨床研究」
(Metabolic Syndrome is Linked to the Incidence of Breast Cancer)
ご興味のある方は、ぜひご参照ください。
リード
「メタボリック症候群と乳がんとの関係に関する臨床研究」(Metabolic Syndrome is Linked to the Incidence of Breast Cancer)というタイトルの論文が2025年10月8日、Springer系の専門誌であるCardiovascular Drugs and Therapy(IF:3.1、H-Index:83)にonlineとして掲載されました。(Cardiovasc Drugs Ther. 2025 Oct 7. doi:10.1007/s10557-025-07780-4. Online ahead of print. PMID: 41055859). この研究は、錦秀会・阪和記念病院の北風政史医師らが、大阪大学医学系研究科、関西大学、大阪難病財団などの研究者と遂行したものです。本研究により、メタボリック症候群(いわゆるメタボ)が乳臓がんの発症に対して抑止的に作用する可能性が明らかとなりました。本研究の成果は、閉経期前後の過度なダイエットなど乳がんの予防戦略を考える上で貴重な根拠のひとつとなると考えられ、大きく臨床医学および貢献するものと期待されます。目的
乳がんは思春期以降の女性に発症し、加齢とともに発症率が増加することが知られています。これまで、メタボリックシンドローム(MetS)はほとんどすべてのがんの発症率を高めると報告されていますが、乳がん発症におけるMetSの役割については明確な一致した見解が得られていません。本研究では、MetSが乳がん発症に及ぼす影響を明らかにすることを目的としました。方法
この関係を明らかにするため、2005年から2020年にかけて収集された日本人女性の医療データを解析し、乳がんの発症率を検討しました。MetSの診断は、日本の診断基準およびNCEP ATP IIIガイドラインによる欧米の診断基準に基づいて登録時に判定しました。そこで、JMDCより約460万人の医療ビッグデータの提供を受け、メタボリック症候群と膵臓がんの関連性を後ろ向き観察研究で検討しました。 約460万人より一般女性住民コホート1,144,791名の欠損データのない対象を解析対象とし、観察開始時点で乳がんを有していた32,775名を除外しました。このうち、観察期間中に新たに乳がんを発症した方は54,330名でした。結果
日本基準で定義したメタボリック症候群の前段階(pre-MetS)および確定したメタボリック症候群(MetS)はいずれも、予想外に乳がん発症率の低下と関連していました(メタボリック症候群のない方(non-MetS)との比較としてのハザード比[HR]=0.90[95%信頼区間0.86–0.94]、p<0.005;およびHR=0.83[95%信頼区間0.80–0.87]、p<0.005)。また、欧米の診断基準によるメタボリック症候群においても乳がん発症率の低下と関連しており(HR=0.87[95%信頼区間0.84–0.90]、p<0.005)、高血圧や体重名などのメタボリック症候群の構成因子の数が増えるにつれて、HRは段階的に低下しました。年齢別解析では、この傾向は50歳未満の群で最も顕著で、60歳以上の群ではこの傾向は消失することが示されました。結論
メタボリックシンドローム(MetS)は、特に50歳未満の女性において、乳がん発症率の低下と関連していることが示唆されました。