脳血管内治療

脳血管内治療とは

脳血管内治療の概要について

脳血管内治療とは?

  • 脳の病気に対して、外科治療のように直接切ることなく、カテーテルという細いチューブを用いることで血管の内部から病気を治療する方法です。
  • 多くの場合局所麻酔での治療も可能で、手術自体が体に対する負担が軽いため近年急速に普及しています。

 

脳血管内治療の対象となる代表的な病気

脳動脈瘤(くも膜下出血)

脳動脈瘤とは、脳の血管にできる“コブ”のことです。脳動脈瘤がある程度大きくなると突然破裂して脳出血を起こします。これがくも膜下出血という病気です。従来はクリッピング術という全身麻酔で行う開頭手術で動脈瘤をクリップではさむ治療が行われていました。これに対し脳血管内治療では血管内を通して脳動脈瘤にマイクロカテーテルを誘導し内部からプラチナ製のコイルを詰めていきます。近年ではクリッピング術と並び動脈瘤治療のスタンダードとなっています。

 

脳梗塞超急性期

脳梗塞とは脳の血管が詰まってしまい、脳に血液が流れなくなるため脳細胞が死んでしまう病気です。一度脳細胞が死んでしまうと元に戻ることはなく後遺症が残る原因となります。しかし、脳血管が詰まっても数時間以内であれば、血流を再開させることができれば脳細胞が死なずにすむこともあります。近年ではt-PAという注射薬を用いて、脳血管に詰まった血栓を溶かすことが可能となりました。しかし、その有効率は30%程度と決して高くはありません。脳血管内治療では、t-PAが無効であったり、何らかの事情で使用できなかった場合などに血栓を除去するカテーテルを用いて直接閉塞した脳血管を再開通させることが可能です。t-PAを補完するためにも脳血管内治療が非常に重要な役割を果たしています。

 

頚動脈狭窄症

頚動脈は動脈硬化が起こりやすい場所で、しばしば狭窄を認めます。狭窄に対しては、内科的治療として、高血圧、脂質異常症、糖尿病など動脈硬化の原因疾患コントロールとともに血栓を防ぐための薬物治療を行います。しかし欧米で行われた大規模な臨床試験により、60%以上の狭窄を有する場合は外科的な血行再建術を行った方が脳梗塞の予防効果が高いことが立証されています。外科的な治療法には直達手術と血管内治療があります。直達切開手術としては全身麻酔下に狭窄部の前後の血管を一時遮断して血管を切開し、狭窄の原因となっているコレステロールや脂肪の塊を除去する内膜剥離術が一般的です。しかしこの治療法は全身麻酔が必要な為、心疾患や呼吸器疾患、重症糖尿病などの内科的合併症を持つ場合にはリスクが高くなります。脳血管内治療は脚の付け根の動脈からカテーテルを狭窄がある頸動脈まで透視下(X線撮影下)に誘導します。狭窄のサイズを計測した後、バルーンで狭窄部を拡張します。ついでステントと呼ばれる金属製の筒を留置して再狭窄を防ぐ治療法です。基本的には局所麻酔下に施行可能であり、上記のような全身合併症を併せ持っている場合でも、手術による合併症が直達手術に比べ少ないといわれています。

 

血管内治療の様子