泌尿器科のご紹介
当院泌尿器科は2022年6月より新病院開設とともに新体制として立ち上げとなり、外来は月曜から金曜まで毎日(2診体制)、手術日は月曜から金曜の週5回行っております。
当科は大阪医科薬科大学腎泌尿器科外科の関連施設となっており連携をしながら手術を含め安全かつ高度な医療を提供しております。
当科は、尿路/男性生殖器を扱う診療科で診断から治療その後のフォローまで一貫して行っております。近年泌尿器科悪性腫瘍は増加傾向にあり、特に前立腺がんの増加は顕著です。
当科では腫瘍マーカーによるスクリーニング、確定診断の前立腺生検を積極的に行っております。
特にRALPにおいてはがんの根治性はもちろん、勃起神経温存etcの術後排尿QOL維持に関しても積極的取り組んでおります。
現在Da Vinciにて腎がん(全摘)、腎盂尿管がん、副腎腫瘍も対応可能です。
尿管結石や前立腺肥大などの良性疾患に対してもTUL(経尿道的レーザー結石破砕術)、PVP(GreenLightレーザ療法)/ WAVE(REZUMシステムを使用した経尿道的水蒸気治療)などの低侵襲治療も積極的に導入・施行しており高齢化社会に非常にマッチする治療と考えております。
当科では上記のような最新の治療も積極的に行っておりますが、地域に根ざした中規模病院の泌尿器科として、日々の暮らしの中で感じる小さな体の変化や不安に、やさしく寄り添う診療も大切にしております。
泌尿器科といえまず頻尿、尿漏れ、夜間のトイレ回数が気になる…などの尿の問題が思い浮かばれると思います。排尿は日々の生活に切っても切れない排泄行為であり、悩んでおられる患者さんは多数いらっしゃいます。
ただし科の特性がら「ちょっと相談しにくい…」こともあると思います。
そんな症状も、安心してご相談ください。男女問わず、すべての年代の患者さまに安心して受診いただけるよう努めてまいりますので是非、当科へ受診して頂き排尿についての悩みを一緒に解決させて下さい。患者さんのご要望に沿った診察・検査・治療をさせて頂きます。
また近隣の開業医の先生方とも連携を強化しており、地域の皆様により良い医療を受けて頂けるよう日々精進しております。
代表的な疾患と治療
前立腺がんについて
前立腺がんは高齢男性に多く、日本では2020年の統計によると約150000人以上の新規患者がおり男性の部位別がん罹患数は最多となっております。背景として高齢化や食生活の欧米化、検査機会の増加が挙げられます。
早期に発見し、適切に治療を行う事が大切で進行している状態で発見されれば生命に関わります。
早期発見のためには、50歳を過ぎたら定期的に検診を受けることが大切です。
症状
初期にはほとんど現れません。進行するにつれおしっこが出にくい、おしっこの回数が多い、残尿感、尿意を感じてからトイレに行くまでに排尿が我慢できない、下腹部の不快感などが現れることがありますがこれは後述の前立腺肥大と同様の症状であり特異的な症状があるわけではありません。
診断
血液検査(PSA)、超音波検査、MRI検査があり、上記にてがんが疑わしければ前立腺組織検査(当院では1泊2日)で精査していきます。
病理組織検査は約1-2週間後に判明しますので、外来で結果を説明します。

出典:前立腺がん 検査 |国立がん研究センターがん情報サービス
治療
治療方法は多岐にわたっており、臨床病期・年齢・ライフスタイルによって患者様、ご家族様とともに決定していきます。
1. 手術治療
当院では現在の主流であるDa VinciXを用いたロボット支援内視鏡下前立腺全摘除術を施行しております。
【Da Vinci(ダ・ヴィンチ)とは】
Da Vinci(ダ・ヴィンチ)Xサージカルシステムは、腹腔鏡手術を支援する内視鏡下手術支援ロボットです。高画質・立体的な視野を得ることができ、人間の手以上の複雑で繊細な手術が可能です。術者の精密な手の動きを再現しつつ、体への負担を少なくした手術です。操作する医師は認定資格を取得し、トレーニングを積んでいます。医師がロボットを活用し、より精緻に行なう手術を行います。
現在腎盂/尿管がん、腎がん(全摘)、副腎も当院で対応可能となっております。

よってロボット支援内視鏡下前立腺全摘除術は安全かつ正確に短時間で手術が施行できるようになっております。 具体的にはメリットとして ①出血量の減少 ②機能温存の成績の向上があげられます。 (②→性機能温存と排尿機能温存のことです)
② に関してはがんの状況(Stage,局在)によって変わりますので1人1人最適な選択をさせて頂きます。


RALP手術創部
2. 放射線治療
① 外照射法 ➡ IMRT(強度変調放射線治療)
文字通り、身体の外から患部に放射線を照射する方法 1月~1月半程度通院が必要です。
② 組織内照射 ➡ LDR,HDR
前立腺に線源を埋め込み、内部から放射線を当てる
密封小線源治療ともいいます
主に上記からの選択となります。がんのrisk分類によってホルモン治療を併用する事も多いです。
3. ホルモン治療
前立腺は男性ホルモンであるアンドロゲンの影響を受け増殖します。前立腺がん細胞も同様にアンドロゲンの影響を受けます。
そこでアンドロゲンの分泌や働きをブロックしてがんの増殖を抑える治療がホルモン療法です。
内分泌療法は手術や放射線治療を行うことが難しい場合や、放射線治療の前あるいは後、がんがほかの臓器に転移した場合などに行われます。
基本的に前立腺がんを抑える治療となりますので、根治を目指す治療ではありません。
前立腺肥大症
そもそも前立腺とは?
前立腺は、男性の膀胱頸部から外尿道括約筋の間で尿道を取り巻くように存在する臓器で前立腺液の分泌や精子の保護などをおこなっております。
前立腺肥大とは
前立腺が歳をとるにつれてだんだんと大きくなり、尿道を圧迫して尿が出にくくなる病気を前立腺肥大症と言います。通常の前立腺の大きさはクルミ大くらいで、これが肥大してくると鶏卵大以上になり、症状が進むと尿が全くでなくなる事もあります。

前立腺肥大とは
排尿症状(排尿困難をはじめとする、尿を出すことに関連した症状)、蓄尿症状(尿を貯めることに関連した症状)、排尿後症状(排尿した後に出現する症状)がみられます。
『排尿症状』‐尿勢の低下、尿線が細い、尿が途切れる
『畜尿症状』‐頻尿(昼/夜間)、尿意切迫感
『排尿後症状』‐残尿感、排尿後滴下
【昼間頻尿】
おしっこの後、2時間以内にまたおしっこをする
【残尿感】
おしっこをした後、尿がまだ残っている感じがする
【尿意切迫感】
おしっこを我慢できない
【尿勢低下】
尿の勢いが弱い
【尿線途絶】
おしっこをしている間、何度も尿が途切れる
【腹圧排尿】
おしっこを始めるためにお腹に力を入れる
【夜間頻尿】
おしっこをするために夜中に何度も起きる
診断方法
自覚症状としての排尿障害の程度を『 国際前立腺症状スコア(IPSS) 』と言うものを用いて問診を行います。IPSSとは1995年にWHO(世界保健期間)により制定された世界共通の尺度です。
表-IPSS

各種検査
尿流量検査‐トイレ型の検査機器に排尿すると、尿の出方がグラフで示され、尿の勢い(1秒間にどれくらいの尿が排出されるか)、排尿量、排尿時間などが自動的に数値化され排尿状態を知ることができます
膀胱内視鏡検査‐本来は膀胱内病変(がん、結石etc)を精査するために行いますが前立腺部尿道の閉塞状態も観察する事もでき治療方針に役立ちます。
治療
前立腺や膀胱の一部の筋肉を緩めて尿の通りをよくする交感神経α1受容体拮抗薬
血管拡張を促し血流改善をはかるPDE5阻害薬
前立腺を縮小させる目的で男性ホルモンの働きを抑える5α還元酵素阻害薬
などがあります
手術療法
症状の重さや前立腺の大きさ、患者さんの年齢や健康状態に応じて適切な治療を選びます。
当院では主にⅰGreenLighレーザー療法(PVP-Photoselective Vaporization of the Prostate) ⅱ経尿道的前立腺切除術(TUR-P- )を行っております。
後述しますがⅲWAVE(REZUMシステムを使用した経尿道的水蒸気治療)も2025年7月~導入となっております。
ⅰ:GreenLighレーザー療法(PVP-Photoselective Vaporization of the Prostate)とは
GreenLightレーザ療法とは、内視鏡(膀胱鏡)を用いて尿道から小さな光ファイバを通して行う手術です。この光ファイバから高出力レーザを照射し、前立腺組織を蒸散させることで尿路のつまり(閉塞)を取り除くという治療法です。


Green Light XPS™ システム

出血が極めて少ないのが最大の特長(血管をすぐに凝固できる)で高齢の方や抗血小板薬を止められない方にも施行可能で当院では3-4日程度の入院で施行しております。
ⅱ:経尿道的前立腺切除術(TUR-P- )とは
前立腺肥大症(BPH)に対する最も古くから行われている標準的な手術法です。
肥大した前立腺の内側部分(尿道を圧迫している部分)を電気メスで切除します。
非常に大きな前立腺に対しても対応可能です。
ⅲ:前立腺肥大症の経尿道的水蒸気治療(WAVE治療・Rezum)とは
Rezum(レジューム)という機器を使用する経尿道的水蒸気治療(WAVE治療)は、2022年9月から本邦で行えるようになった低侵襲の新しい前立腺肥大症の内視鏡手術です。水蒸気を利用して肥大した前立腺組織を壊死・退縮させますが、術後5年経過時点においても効果は安定しており再手術率は低く(4~5%)、また従来の手術に比べて性機能が維持されることが示されています。
治療時間は平均10分以内程度と短く、当院では1泊~2泊の入院で行っています。
治療効果は手術後1カ月程度から現れます。

尿管結石
尿路結石とは
腎臓から尿管・膀胱・尿道に至る尿の通り路(これを尿路といいます)に結石が存在する病気です。結石のほとんどは腎臓でつくられその一部が尿とともに尿管、膀胱に流れ落ちます。結石が自然に排出されず腎臓や尿管にとどまると、腰やお腹の激しい痛み・血尿などを起こすことがあります。放っておくと腎臓の機能が低下したり尿路感染症の原因にもあります。
よって尿路結石(腎結石、尿管結石)の中で、自然排石しない尿管結石や1cm以上の腎結石、もしくは水腎症(尿の流れが悪い状態)を伴う尿管結石などは治療介入が必要です。

治療
一般に、尿路結石の治療は、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)と経尿道的尿路結石砕石術(TUL)があり当院ではTULが施行できます。
ESWLは比較的簡単な治療法ですが、破砕効果にばらつきがあり複数回の治療が必要になることがあります。また追加でTULが必要となるケースもあります。
一方、f-TULは結石を内視鏡で直接確認してレーザーで砕石するので、ほぼ確実に結石を砕き取り除くことが可能です。
TUL方法
TULは細径の柔らかい軟性(もしくは硬性)尿管鏡を麻酔をかけた状態で、尿道の入り口より膀胱、尿管、腎まで挿入し、結石を同定しレーザーを用いて破砕します。破砕された結石はバスケットカテーテル(結石をつかむ器具)で回収し尿管ステントを留置し終了します。

診療実績
2023年 | 2024年 | 2025年 1月~6月 |
合計 | |
---|---|---|---|---|
①TURBT | 65 | 132 | 61 | 258 |
②前立腺生検 | 35 | 63 | 44 | 142 |
③TUL結石全て | 30 | 37 | 13 | 75 |
④RALP(前立腺全摘) | 7 | 15 | 11 | 33 |
⑤腹腔鏡下腎、副腎、腎尿管手術 | 8 | 10 | 5 | 23 |
⑥RAPN(腎部分切除) | 1 | 0 | 2 | 3 |
⑦膀胱全摘 | 0 | 2 | 0 | 2 |
⑧TUR-P | 20 | 20 | 12 | 52 |
2025年10月~ 外来診療表
時間帯 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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午前 | 谷口 俊理 | 木村 孝平 | 岩槻 憲吾 | 谷口 俊理 | 谷口 俊理 | – |
岩槻 憲吾 |
非常勤講師 (専門外来) |
木村 孝平 | 岩槻 憲吾 |
非常勤講師 (専門外来) (第2週のみ) |
– |
医師紹介
泌尿器科
スタッフ
-
医員
木村 孝平専門分野
泌尿器全般 泌尿器悪性腫瘍
所属学会
- 日本泌尿器科学会 日本泌尿器内視鏡学会 日本透析学会
認定資格
日本泌尿器科学会専門医 da Vinci Surgical System certification